高齢ドライバーの事故を防ぐ、手動ブレーキ改造

1. はじめに

現代の高齢化社会では、運転中の小さな操作ミスが重大な事故につながるケースが増えています。特に、ブレーキやアクセルの踏み間違えが原因で発生する事故は、高齢ドライバーにとって深刻な問題となっています。一方、自家用車は高齢者の日常生活(買い物や通院など)に欠かせない存在です。免許を返納してしまうと、生活の自由度が大きく損なわれ、「買い物難民」になる恐れなどもあります。

本記事では、足での操作が難しい高齢ドライバーをサポートする「手動ブレーキ改造」に焦点を当て、その安全性向上効果と生活の質改善について詳しく解説していきます。

高齢ドライバーの事故を防ぐ、手動ブレーキ改造

2. 高齢ドライバーの現状と課題

高齢化社会と交通事故の現状

日本は急速な高齢化が進む中、運転技術の低下や反応速度の遅れにより、高齢ドライバーによる交通事故の発生が増加しています。警視庁は65歳以上のドライバーを「高齢運転者」と読んでいますが、特に、ブレーキの踏み間違えなどの操作ミスが事故の原因となるケースが目立ち、交通事故のリスクが高まっています。

内閣府による「令和6年交通安全白書」では、特集として「高齢者の交通事故防止について」を取り上げています。高齢者の運転免許保有率も高く、75歳以上の免許保有者も増えている中で、高齢運転者が第一当事者となる交通事故は増加傾向にあります。

主な事故要因として、加齢による認知機能の低下と操作ミスが挙げられていますが、 認知機能の低下による判断ミスや注意力の減退とブレーキとアクセルの踏み間違えなどの操作ミスは、密接に関連しています。

免許返納による生活への影響

しかしながら、車は高齢者にとって単なる移動手段以上の意味を持っています。買い物、病院への通院、地域とのつながりを維持するために、車の利用は不可欠です。免許を返納してしまうと、生活圏が狭まり、公共交通機関が十分でない地域では「買い物難民」や「買い物弱者」となってしまうリスクが高まります。農林水産省 による「食品アクセス問題」に関する 全国市町村アンケート調査結果(令和6年3月)においても、食品アクセス問題、いわゆる「買い物難民」問題への対策が必要になった背景として、「免許返納者の増加」を挙げる自治体が3割に上っています。様々な対策戻られていますが、高い効果が上っているとは言えないのが現状のようです。

このように、高齢ドライバーが運転に不安を覚えた時に即免許を返納してしまうと、食品アクセス問題に限らず、通院や通勤に用いている場合はより生活の困難度が上がってしまう可能性があります。何か高齢ドライバーの運転技術や操作をカバーし、より安全なカーライフを送れる手段はないでしょうか?

アクセルとブレーキの踏み間違えによる事故が起こりやすい

アクセルとブレーキの踏み間違えによる事故は、高齢ドライバーが起こしやすいと言われています。交通事故総合分析センター(略称:ITARDA)は、高齢ドライバーによる特徴的な交通事故として「アクセルとブレーキの踏み間違い事故」の分析をしています。検証の結果、高齢ドライバーは上半身を右方向に捻り、駐車スペースに車を止めようとした時などによくある、後方を目視確認する姿勢をとったときに、足の開き具合からブレーキペダルを踏むつもりでアクセルペダルを踏みやすくなることがわかっています。

判断力の低下から慌てて踏み間違える、といったことだけでなく、高齢ドライバーは運転席でのポジショニングによる影響も受けるようです。アクセルとブレーキの踏み間違え事故を起こさないようにする対策として、「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」などがあります。

しかし、加齢によりそもそも「足で操作する」機敏性や動作性が落ちているとするなら、咄嗟の時に「手でブレーキをかける」ことができることは、事故防止に大きく役立つのではないでしょうか?

そこで、今回ご紹介するのが、手元でブレーキの操作が可能になる「手動ブレーキ改造」です。

 

3. 手動ブレーキ改造の概要とメリット

手動ブレーキ改造とは?

「手動ブレーキ改造」とは、従来の足踏み式ブレーキに代わり、手元で操作可能なブレーキシステムを取り付ける改造です。改造を施すことで、アクセルとブレーキの操作を手で行えるようになり、足元の操作に不安を感じる高齢ドライバーでも安心して運転できる環境が整います。

高齢者にとっての操作のしやすさ

高齢ドライバーの場合、足元の感覚や反射神経の低下により、従来のブレーキ操作が難しい場合があります。手動ブレーキ改造は、手の感覚を活かしてより直感的に操作できるため、運転技術の向上とともに、事故のリスクを大幅に軽減する効果が期待できます。

4. 福祉車両改造がもたらす安全性と生活の質向上

手動ブレーキ改造は、どのように安全運転をサポートしているか

手動ブレーキ改造を導入することで、例えば急ブレーキ時の反応時間を短縮し、余裕ある運転が可能になります。実際に改造を施した車両のユーザーからは、ブレーキ操作ミスが減少し、安心して運転できるというお声をいただいています。

国土交通省による乗用車等の衝突被害軽減ブレーキの導入義務付けに関する通達によれば、高齢ドライバーによる交通事故の防止に向け、令和3年 11 月から国産の新型車には衝突被害軽減ブレーキを導入することが義務付けられています。しかし、このような装置は中古車や今現在使用している自動車に導入することが困難です。手動ブレーキ改造は補足手段として、選択肢の一つとなり得ます。

高齢者の生活支援としての役割

手動ブレーキ改造は単なる安全対策に留まらず、高齢者が自立した生活を送るための重要なサポート手段ともなっています。運転技術に不安を覚えても、買い物や通院などは日常生活に欠かせないものです。高齢ドライバーの運転技術をサポートし、安心して自家用車を利用できる環境を提供することで、地域社会全体の生活の質向上や社会課題に貢献します。

5. 改造の導入事例とお客様の声「高齢ドライバーの事故を防ぐ!手動ブレーキ改造」

当店で実際に手動ブレーキ改造をおこなった車両を使い、手動ブレーキ装置の操作感などを動画にまとめました。

動画の概要

この動画は、高齢ドライバー向けの手動ブレーキ改造についての詳細な説明を提供しています。足の障がいや加齢による足の動きの不安に対応するため、実際の車両に補助的な手動ブレーキを設置した事例を紹介しています。

装置の外観、足元のブレーキ根本部分への取り付け状況、シャフトの配置、操作レバーの位置などが詳しく解説されています。ウインカーレバーの近くに設置され、操作しやすい位置に配置されています。

手動ブレーキは下方向に押すだけの簡単な操作で作動し、足元のブレーキペダルと連動して動作します。

アクセルは足で、ブレーキは手動で操作する使い分けが可能で、足の動きが遅くなった場合でも迅速なブレーキ操作が可能となります。特に、信号待ちでの無意識的なブレーキ解除や、足の動きの遅さによる制動の遅れなどの問題に対する有効な解決策になるでしょう。

誤発進防止装置との比較検討があったものの、足の動きの遅さやブレーキを踏み続ける力の弱さ、無意識的なブレーキ解除などの具体的な問題に対する解決策として、手動ブレーキが選択された経緯も語られています。

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